実は我が家のおパグ様、PUGBIIKIのころも宣伝部長さんですが、「線維反応性腸症」という繊維の入ったフードをしばらく食べないでいると💩がユルユルになってしまうといういささか可哀想な症状がありまして。
あまり一般的ではないかもしれませんが、「線維反応性腸症」という、いわゆるちょっとお腹が弱い系の症状について、今回はお話したいと思います。
はじめに:なぜパグにおいて腸症が気になるか
パグはその一口大のサイズ、平面顔(短吻種特有の構造)などから、呼吸器や眼、皮膚、関節、脊椎などさまざまな不調が起こりやすい犬種として知られています。
(例:パグは髄膜の線維化・癒着が原因の脊髄変性が報告されていることもあります)
腸への影響は一般的に「下痢・便変化・消化不良」などとして現れますが、慢性化・進行性の腸疾患(=壁の線維化を伴うもの)は診断・管理が難しいため、早めの認識と対処が重要です。
「線維反応性腸症」とは?(犬における概念整理)
日本語で比較的よく見かけるのが「線維反応性腸症(線維反応性大腸性下痢)」という用語です。以下、主な内容を整理します。
定義と背景
- 慢性の大腸性下痢を起こす犬のうち、食物線維を加えることで下痢が抑制できる傾向があり、それを診断の手がかりとするものを「線維反応性腸症」と呼ぶケースがある。
- 線維(食物繊維)を加えて便量を増やし、腸の運動刺激を促すことで、便の形状・通過パターンを安定させようという考え方がベースにある。
- 発症年齢は中年~シニア犬で多いとの記載もある。
- ただし、あくまで“他のタイプの腸疾患を除外した上で、線維入り食事により改善が見られる傾向をもとに仮診断する”という扱いであり、確定的な診断名とは言い切れない面もあります。
主な症状
線維反応性腸症とされる状態で見られやすい症状は、以下のようなものです。
- 下痢(軟便〜水様便)
- 粘液便、血便(鮮血)
- しぶり(排便困難感・残便感)
- 排便頻度の増加
- 時に嘔吐、食欲低下、体重減少
ただし、これらの症状は腸の他疾患(炎症性腸疾患、感染性腸炎、腫瘍、寄生虫、腸管運動異常など)でも共通するものが多く、慎重な鑑別が必要です。
診断の考え方・限界
- 線維反応性腸症と呼ばれるタイプは「除外診断」によることが多いため、まずは感染症、寄生虫、腫瘍、炎症性腸疾患(IBD)などを調べる検査が行われる必要があります。
- 線維入り食事を一定期間(例えば数週間〜数か月)継続し、改善の傾向が見られるかを観察する「治験的トライアル」が診断補助になることがあります。
- ただし、線維反応性腸症と診断された犬のすべてが症状改善を示すわけではなく、進行した腸壁の線維化や他疾患併存例では治療が難しい場合があります。
腸壁の線維化を伴う重篤型:fibrosing enteropathy 等の報告
より重篤な形態として、腸壁の線維化(線維組織の過剰蓄積)を主体とする “fibrosing enteropathy / idiopathic fibrosing gastrointestinal disease” が報告されています。これはいわゆる「腸壁そのものが硬くなって機能が落ちる」タイプです。
病態メカニズム(推定)
- 正確な原因は不明(特発性)であることが多い。
- 腸壁内の平滑筋の萎縮、筋層の減少、線維成分(コラーゲンなど)の増殖などが認められる例がある。
- 腸の蠕動運動低下や通過遅延、吸収不良などを来す可能性がある。
- いわゆる慢性腸管性偽性閉塞(chronic intestinal pseudo-obstruction, CIPO)症例の報告もあり、パグでの報告例も文献にあります。
臨床報告例:パグでのケース
- ブラジルの報告では、パグで「chronic intestinal pseudo-obstruction」に関連する病変が見つかり、腸の平滑筋細胞(leiomyocyte)の減少・変性が報告された例があります。
- こうした例では、腸の動きが極端に落ちたり、便通が非常に不安定になったり、しばしば重篤な状態となることがあります。
これらの報告例は比較的まれですが、進行した腸症状を示す犬では念頭に置くべき病態のひとつです。

パグ特有の注意点とケアのポイント
線維反応性腸症や腸壁線維化を念頭におく際、パグだからこそ特に注意したい点を以下にまとめます。
| 項目 | 注意点・対策 |
|---|---|
| 消化力・咀嚼 | パグは口腔構造が短吻型で、食べ物の咀嚼が不得意なことがあるため、消化性の高い食材や小粒のフードが好ましい。 |
| 肥満対策 | 肥満になると腸への負荷も増えるため、体重管理を徹底することが腸への負担軽減につながる。 |
| ストレス・変化 | 環境変化・ストレスが腸に悪影響を与える可能性があり、腸症の誘因となることも指摘される。 |
| 栄養バランス | 食物線維を増やすときは過剰にならないように、タンパク質、ビタミン、ミネラルのバランスも配慮する。 |
| 定期チェック | 血液検査、糞便検査、体重・体型・便の観察などを定期的に行う。 |
| 早期受診 | 長く続く下痢、血便、食欲不振、体重減少などがある場合は早めに獣医へ相談する。 |
線維性腸症を念頭に置いた対処・治療戦略
以下は線維反応性腸症や線維化傾向を持つ腸症を管理するための一般的な指針(文献・獣医臨床経験をもとに)ですが、最終的にはかかりつけ獣医とよく相談して進める必要があります。
食事管理
- 繊維(食物線維)の追加
可溶性繊維・不溶性繊維を組み合わせて添加するケースがある。繊維により便通の調節作用を期待する。 - 高消化性フード
消化吸収が容易なタンパク質、脂肪量を抑えた設計のフードを選ぶ。 - 除去食/アレルギー対応
特定タンパク質が炎症を助長している可能性がある場合、除去食や novel protein(未使用のタンパク源)を試す。 - 水分量確保
下痢傾向の犬では脱水を防ぐため給水量にも配慮を。ウェットフードとの併用も検討。
薬物治療
線維化主体の進行例や炎症併存例では、食事だけでコントロールできないこともあります。
- 抗炎症薬/免疫抑制薬
ステロイド(プレドニゾロンなど)を使用する例。ただし副作用管理が必要。 - 腸運動改善薬
蠕動運動を促す薬剤(例:プロキネティクス)を併用することがある。 - プロバイオティクス
腸内細菌バランスを整える意図で用いられることがある。 - 補助療法
腸粘膜保護剤、腸内環境改善補助剤、消化酵素補助など。
定期モニタリングと調整
- 便の性状、頻度、排便量、血便の有無を逐次観察
- 体重・体格変化を記録
- 血液検査(CBC, TP, ALB, 総蛋白、電解質, 腸吸収マーカー等)
- 必要に応じて画像診断(腹部超音波、内視鏡、生検)
予後・見通し
- 線維反応性腸症レベルなら、適切な食事管理と薬物併用で比較的安定化する例もある。
- ただし腸壁に高度な線維化を伴う例は進行性となりやすく、寛解・維持が難しいこともある。
- 早めに介入するほど、腸の可塑性を残しやすいと考えられる。
“こんなときは要注意” — パグオーナーへのチェックリスト
- 排便変化が続く:3日以上続く下痢や軟便、鮮血便、粘液便
- 食欲低下・嘔吐が併発:特に慢性化傾向が見られる場合
- 著しい体重減少:1〜2か月で明らかに痩せてきた
- 頻繁な“しぶり”や排便困難感:便が細くなる、残り感がある
- 脱水傾向:水をよく飲む、口の渇き、眼のくぼみなど
- 治療への反応が乏しい:通常の下痢対策で改善がみられない
これらの兆候が少しでもあれば、腸疾患を念頭に、できるだけ早く獣医師に相談されることを強くおすすめします。

まとめ:パグと腸の健康を守るために
- 「線維反応性腸症」は、線維を補うことでコントロールを図る考え方が基盤の犬の腸症ですが、あくまで除外診断的な扱いであり、すべてがこの型に当てはまるわけではありません。
- 一方、腸壁の線維化を伴う重篤型(fibrosing enteropathy, CIPO を含む)は進行性で対応が難しいことがあるため、早期発見・介入が重要です。
- パグならではの消化器・体質上の注意点を念頭に、普段から便や食欲、体重の変化をよく観察しておきましょう。
- 変化があれば早めに獣医師にかかり、必要な検査や対応を始めることが、長期的な腸の健康維持につながります。


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